北星社
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麻衣子の小指 藤代 美沙子
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人間の悲しさ、切なさを描いた、珠玉の作品集

作風は、一貫して、揺るがない。…(略)…
私たち読者は、藤代作品を読みながら、
私たちの生きているこの世界が、
結局は人間と人間との愛情によって成り立っており、
それ以外の要素は所詮、
どうでもよいことなのだと思い知らされる。

「出版に寄せて」より 森本 穫

「おばちゃん、こんにちは。おせわになります。」可愛らしい両の手ェ、畳について、甥が教えたんでおますやろ、体の小さい麻衣子には吃驚するような大きな声で、そんな、おせらしいことをしっかりと言いました。今、思い出しても、涙こぼれるくらい可愛らしいお下げでしたなあ。「麻衣子の小指」より

藤代美沙子[著者略歴]
1955年(昭和30年) 兵庫県高砂市に生まれる。
1991年(平成3年) 姫路文学人会議『文芸日女道』同人となる。
1992年(平成4年) 『文芸日女道』に小説や随筆を発表しはじめて現在に至る。
2009年(平成21年) 5月に姫路市から転居し、現在は加古川市在住。

書 評

2011年(平成23年)4月17日(日)神戸新聞 「ひょうご選書」より

藤代美沙子著「麻衣子の小指」
人間の悲哀描く短編集

 「私の小指は、すっごく短いのよ。」手相占いでも<親子の縁に薄い>と告げられた主人公・麻衣子の数奇な半生が、父の従弟と叔母、父、夫の視点からつづられる。
 両親の離婚により2歳で叔母宅に預けられ、愛情深く育てられるも、父の再婚で家に戻る。やがて父が40代の若さでがんに侵されると、その強い希望で見合い結婚。葬儀のさなか、夫は「僕らの子供はいっぱい作ろう」とそっと誓う―。
 最後まで麻衣子自身の思いが語られることはないが、周囲のまなざしはいつも彼女に温かい。しかし読後に残るのは、愛らしくも痛々しく、はかなげな少女の面影だ。それは幸不幸など超えた、人間が生きていくこと自体に伴う悲しみかもしれない。
 表題作のほか「腕」「不可愛」「モンチッチ」など、18作品を収めた短編小説集。共通して描かれるのは、家族との愛情と葛藤、そしてその果てに見える風景である。おそらく著者の実人生によって裏打ちされた物語群は、確かな重みと優しさをもって、読者の心に触れてくる。
 著者は1955年高砂市生まれ。姫路文学人会議「文芸日女道」同人。加古川市在住。

(北星社・1890円)