北星社
〒668-0061 兵庫県豊岡市上佐野1620
TEL0796-22-4141 FAX0796-29-2246
丹波の生活衣
丹波の生活衣
B5判 186頁
[本体価格2500円+税]
ISBN978-4-939145-29-2 C0039
書店様、注文書をダウンロードしてご利用ください 注文書(PDF)ダウンロード

紙書籍版 ネットストアはこちら
アマゾンでこの本を探す

 

明治・大正・昭和の着物と暮らし

染織家・河口三千子氏のコレクションを基にした明治から昭和にかけての約7000点の丹波地方の暮らしの着物から、テーマ別にその特徴をよく表すものをカラー写真で紹介し、丹波生活衣振興会メンバーの思い出を加えて解説しています。

着物が普段着であった時代からいつの間にか姿を消していくまでの人々の暮らしの様子をリアルに伝えており、一地方の服飾史を越えた貴重なドキュメントです。

 

目  次

第一章 季節
薄物の晴れ着/男の単衣着物/浴衣/防寒着/文様と染め
第二章 ハレとケ
女性の晴れ着(婚礼と葬儀)/男性の晴れ着(裃・紋付羽織袴)/家紋の付いた着物/油単・幟・幔幕/男の野良着/女の野良着/男の普段着/襷と前垂れ
第三章 子どもの着物
子どもの普段着/子どもの晴れ着/宮参り着と七五三参り/産着とこおずき・ねんねこ
第四章 お洒落
和装小物/足袋と草履・下駄/帯/コートと肩掛/羽織/男性のおしゃれ
第五章 着物と女性
丹波木綿/地絹/機織/洗い張り・繰り回し/端裂と継ぎ接ぎの着物/女子教育と裁縫
第六章 暮らしの中の布
袋物/夜着・布団/盥と蚊帳/風呂敷と袱紗
第七章 時代の風
戦時下の服飾、銃後の守り/事務服と戦後の合理化運動

 

書 評

2012年4月22日神戸新聞「ひょうご選書」より
吉田 ふみゑ・歴史民俗誌「サーラ」編集長

着物の時代鮮やかに 個人の史実積み重ね

20歳になったばかりの頃、母から「嫁入りしたら、せめて着物の縫い直しぐらい自分でできないと恥ずかしい」と言われ、裁縫の稽古に行った。その後、着物を着て生活することはまったくなく、まして縫い直しすることはなかった。着物が生活から消えたのは1970年前後と線を引くと、自分用の座布団と裁縫道具を持って通ったわずか1年ばかり、私の和裁修行は、その境界線上であったと思う。

そんな遠い記憶が甦ったのは、福知山市を流れる由良川を見下ろす山寺で丹波木綿を織っておられた故・河口三千子さんに出会ったからだった。河口さんは63年頃から、木綿織りの手がかりにと明治・大正・昭和の丹波(福知山・綾部市・丹波市)の地で着られた普段着・外出着・野良着を夫で住職の白鴎師の協力を得て集め始めた。集め始めると、着物を着て洗濯も炊事もした時代の人々の暮らしぶりが鮮やかに見えてくるのだった。河口さんは古老たちから多くを聞き取り、それらを「生活衣」と名付けた。94年に2000点余りを福知山市に寄贈し、資料館の開設を請願した。

本書の著者は、河口さんの同志で共に館の建設を市に求めた丹波生活衣振興会の方々である。2002年に「福知山市丹波生活衣館」がオープンしたときには河口さんはすでに故人となられていた。リーダーを失った同志たちは、失意の中で資料の充実を図り、調査を進め、開館10年の節目を迎えた。

著者は一般論ではなく客観的な事実、個人的な史実に重点を置いて書いている。そのことが本書の資料性を高めている。地域的な呼び名の違いや都会との時間差はあっても、和服で生活した時代には全国的な共通性があることを教えてくれる。カラー写真も多く、風俗を写し出したモノクロ写真も入れると約350点もの写真が掲載されている。

表紙を飾っている継ぎ接ぎのボロボロの「布団の中入れ布」と向き合うと、現代の消費一辺倒の社会が浮かび上がってくる。また、この布を最初に見出した河口さんへの供養と、布の命を使い切る先人の暮らしを思い、自然と合掌したくなる。

この本を祖父母や曾祖父母の時代のものととらえる世代にこそ薦めたい。